犬が舌を出したり、ペロペロする仕草ってとっても可愛いですよね。
この舌を出したりペロペロする仕草には、実にさまざまな意味があって怖い病気が隠れていることもあります。
そこで今回は、犬が舌を出したりペロペロする理由や意味として、代表的なものをご紹介します。
体温調節(パンティング)
犬は体温調節のために、舌を出してハァハァとあえぐ(パンティング)ことがあります。
これは、犬がする最も特徴的な動作の一つですね。
このようなパンティングをしているときは、熱中症にならないように温度・湿度調整をしてあげましょう。(湿度も重要!)
※犬種にもよりますが、犬が快適に過ごせる設定温度は23℃~25℃ほど、湿度50%ほどといわれています。
ところで、汗線には次の2つの種類があります。
- エクリン汗線(おもに体温調整するためのもの)
- アポクリン汗線(おもに異性を惹きつける臭いを出すためのもの)
人間の場合は、このエクリン汗線が全身にあるため、暑いときには多くの汗をかくことで体温を効率的に下げることが出来ます。
ところが、犬にはこのエクリン汗線が肉球や鼻など部分的にしか存在しないので(アポクリン汗線は全身に分布しています)、人間のように効率的に体温調整ができないのです。
そのため、犬は舌を出してハァハァとあえいで(パンティング)、乾いた空気を口の中(気道)に取り入れることで、唾液の蒸発による冷却効果を利用して体温を下げるしかないのです。
なお、短頭種は鼻が短く口腔内の面積が小さいため冷却効率が悪いので、舌を出してパンティングしていることが多く、特に熱中症に注意しなければいけません。
短頭種とは、パグ、フレンチブルドッグ、シーズー、ボストンテリア、ボクサー、チャウチャウ、イングリッシュブルドッグ、 狆、ペキニーズ、ブリュッセルグリフォン、キングチャールズスパニエル、チワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズ、キャバリアなどの犬種のことです。
ちなみに、チワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズ、キャバリアが短種種に分類されるということはあまり知られていないので注意が必要です。
リラックス・期待・興奮の状態
犬の顔の筋肉は人間と基本的に同じ構造ですが、人間よりも筋肉の種類が少ないので、細かい表情は作れません。
しかしながら、犬は咬筋が非常に発達しているため口の表情は豊かで、口周辺の動きは基本的に人間と同じです。
そのため、人間と同じようにリラックスしていると口がゆるむようになるので、舌がピョコッと出やすくなります。
また、期待や興奮が高まると心拍数が早くなってハアッハアッと呼吸数が多くなるので、口を大きく開けて舌を出すようになります。
逆に、緊張が高まると口をギュっと固く閉じるようになります。
相手をなだめようとしている(カーミングシグナル)
犬は、相手に服従の意志を伝えて相手をなだめようとするときに、空中をなめるように舌をペロペロと出すことがあります。
例えば、怒りをあらわにした相手(犬や飼い主など)と対面したときに、「おこらないで」「落ち着いて」「いじめないで」という意味で、舌をペロペロとするのです。
同様の意味で、以下の動作をすることがあります。
- 尻尾を下げて小刻みに振る
- しゃがんで尻尾を振る
- 耳を伏せる
- 自らの口をなめる
- 円を描きながら相手に近寄る
舌をペロペロする動作の他にこのような動作をしていれば、相手をなだめようとしている(カーミングシグナル)と判断することができます。
自分の嫌な気持ちを落ち着かせるため(カーミングシグナル)
犬は、不安や緊張、ストレスを感じているときに、自分の嫌な気持ちを落ち着かせるために、舌を出してペロペロすることがあります。
同様の意味で、以下の動作をすることがあります。
- 鼻を舐める
- 耳を横や後方にひく
- 口を閉じる
- あくびをする
- 顔・目をそらす
舌をペロペロする動作の他にこのような動作をしていれば、まず犬のおかれている状況を考えてみて、犬のストレスになるような原因がないか探ってみましょう。
舌が長い
人間でも舌の長い人・短い人がいるように、舌の長い犬もいれば短い犬もいます。
舌が長いと、単純に舌が口の外に出やすくなります。
そのため、舌の長い犬は、舌がピョコッっと少し出たりします。(特に寝ている時などに多いようです)
歯並びや噛み合わせ、抜歯
犬の歯(特に前歯)は舌が出しっぱなしにならないようにする役割があります。
ですので、次のような原因で歯に隙間が出来ると、舌が出やすくなります。
特に、寝ている時などは舌が出やすくなるようです。
- 歯並びが悪い
- 噛み合わせが悪い
- 出っ歯(オーバーショート。上顎が出ている。)
- 歯が短い
- 歯周病治療による抜歯
- 歯周病や歯槽膿漏などにより歯が抜ける(老犬に多い)
なお、下顎の犬歯を抜歯すると舌が変位・下垂して舌が出しっぱなしになることが多いですが、抜歯後の処置で舌が出ないようにできるようです。
一般的に歯周病などで下顎の犬歯を抜歯する場合、舌が変位・下垂して出っぱなしになることが多いです。これは獣医学的にも、仕方のないこととされていますが、少しの工夫でこれは避けることができます。抜歯した付近の口腔粘膜を切開・整形・縫合することで、元通りの外観を保つことができます。
出典:やまと動物病院
気分が優れないとき
吐き気がするなど、気分が優れない時に犬は舌を出してペロペロします。
吐き気には、胃腸、肝臓、膵臓、腎臓などの病気・不調が原因していることがあります。
このような場合、水をたくさん飲む、おしっこをたくさんする、食欲が無い、元気がないといった症状が出る場合があるので、ワンちゃんの症状をよく観察してあげて下さい。
口の中に違和感のあるとき(歯周病、口内炎、舌炎、口の中の腫瘍など)
犬は、歯周病、口内炎、舌炎、口の中の腫瘍など、口の中に違和感があるときに、舌を出してペロペロすることがあります。
このようなときは、ドッグフードが食べづらくなったり、口臭がひどくなったりしますので、口の中をよくチェックしてあげてください。
鼻炎などで鼻水が出ているとき
犬も人間と同じように鼻炎になると、鼻水を垂らすようになります。
そして、犬は鼻水を気にして、舌を出してペロペロ舐めてしまうのです。
ワンちゃんが、鼻水を出していないか、くしゃみを繰り返していないかなどを観察してあげてください。
てんかん発作の前兆
てんかん発作の前兆で、舌を出してペロペロすることがあります。
このようなときは、ワンちゃんの名前を呼んでみたり、お気に入りのおもちゃやおやつなどを目の前に差し出してみて、普段通りの反応をするかどうか様子を見てみるとよいでしょう。
反応がいつもと違うのであれば、ワンちゃんの様子をメモするか動画で撮影しておくなどしておいて、獣医さんに見てもらいましょう。
診断の手助けになります。
心臓病、呼吸器系の病気
心臓病や呼吸器系の病気にかかると、舌を出してゼエゼエとあえぐ(パンティング)症状を示すことがあります。
暑くもないのに、舌を出して呼吸が苦しそうだったり、よだれをたくさん垂らしていたり、咳を出しているときなどは、心臓病、呼吸器系の病気を疑って病院で診てもらった方が良いです。
主な心臓病、呼吸器系の病気は次のとおりです。
■心臓病
< 主な心臓病 >
僧帽弁閉鎖不全症
〔中略〕
心筋症
〔中略〕
フィラリア症
〔中略〕出典:かまやち動物病院
■呼吸器系
パンティングが止まらない|犬
急性鼻炎
喉頭蓋の後傾/Epiglottic retroversion
鼻腔内腫瘍
誤嚥性肺炎
肺血栓塞栓症
非心原性肺水腫
気管虚脱
さいごに
ご紹介したように、犬が舌を出したりペロペロする動作には、単に気持ちの表れであるものから、怖い病気までたくさんあります。
病院で診てもらう必要がある場合は、事前にワンちゃんの動作や症状などを動画で撮影して獣医さんに見せると診断がスムーズになりますので、ぜひそのようにしてみて下さいね。