犬を飼うにあたって、カットやトリミング、抜け毛の掃除などのお手入れの手間はつきものですよね。
でも、犬に毛が生えて無ければそれらの手間は一切かかりません。
世界には、毛が無いつるつるの犬種が存在します。
そこで今回は、毛が生えていない犬(ヘアレスドッグ)をご紹介したいと思います。
※頭部や脚先など、部分的に毛のある犬もいます。
アメリカン・ヘアレス・テリア
斑が特徴的!人なつっこいヘアレスドッグ
[犬種] アメリカン・ヘアレス・テリア [原産] アメリカ [別名] なし [体高] 18~46センチほど [体重] 2~11キロほど [分類] 小型犬~中型犬 [寿命] 14~16年 [歴史] アメリカン・ヘアレス・テリアの誕生は比較的新しく、1972年にアメリカン・ラットテリアに突然変異が起きて毛の無い犬が産まれ、その犬がアメリカン・ヘアレス・テリアの原型となりました。2004年1月には、ユナイテッドケネルクラブに公認されました。原産国のアメリカでも珍しい犬で、あまり多くは飼われていません。 [外観] ヘアレスという名前のとおり全身には体毛がありません。産まれた直後は体毛がありますが、数週間で全て抜け落ちます。皮膚は非常になめらかで、薄いピンク~ホワイト地に、ブラックなどの班があります。短めのマズルと、クリッとした大きな丸い目、大きな立ち耳、スラッっと長い脚が特徴的で、引き締まった体型をしています。 [性格] 利口で人なつっこい性格で、他の動物や子供とも仲良くできますので、家庭犬に向いています。しかし、祖先犬のテリアの気質の影響で、穴掘りが得意で小動物を見ると反射的に追いかけることがあるので、小動物を飼育しているときは注意が必要です。また、水が苦手なので、川や水場に行く際は目を離さないようにしましょう。無毛のため寒さや日光に弱いので、クリームを塗ったり洋服を着せたりして肌を保護してあげることが大切です。とはいえ、他の毛の無い犬に比べると皮膚は強いといわれています。なお、他のヘアレス犬種が抱える無毛遺伝子特有の疾患はみられません。 |
アルゼンティニアン・ヘアレス・ドッグ
とても希少なヘアレスドッグ
[犬種] アルゼンティニアン・ヘアレス・ドッグ [原産] アルゼンチン [別名] ピラ・ドッグ [体高] 25~45センチほど [歴史] 15世紀ごろにペルービアン・ヘアレス・ドッグとペルービアン・インカ・オーキッドを基礎としてこの犬種が誕生しました。家庭犬として飼われていたほか、人間の体を暖めるために湯たんぽがわりに使用されたといわれています。現在では、個体数が非常に少なくなっており絶滅の危機にあるとされています。 [外観] 身体は基本的に無毛ですが、頭にトサカのような毛が生えていたりします。肌の色はおもにブラックです。長い脚と立ち耳が特徴的で、引き締まった体格をしています。 [性格] 愛情深く活発な性格をしており、飼い主や家族には忠実です。他のペットとも仲良くすることができます。警戒心が強いため、不審な侵入者に対しては威嚇して追跡します。 |
チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
※毛のあるタイプの「パウダーパフ」です。
人間の髪の毛のような冠毛が特徴的なヘアレスドッグ
[犬種] チャイニーズ・クレステッド・ドッグ [原産] 中国 [別名] 麒麟狗(チィリンコウ)、ヘアレス、パウダーパフ [体高] オス:28~33センチほど、メス:23~30センチほど [体重] オス、メス:5.5キロ以下 [分類] 小型犬 [寿命] 13~15年 [歴史] 原産は中国説、メキシコ説、アフリカ説、トルコ説、南米説などがあり、正確には分かっていません。しかし、14~16世紀にメキシコのアステカ族が飼っていたヘアレス犬種の末裔であることは明らかになっています。中国清時代の男性の弁髪に似ていることから、冠毛(クレスト)の名が犬種名になりました。かつては地位の高い人に愛されていましたが、絶滅の危機に瀕したこともあります。しかし、現在では頭数が回復しショードッグや愛玩犬として親しまれており、ヘアレス犬種の中では世界で№1の人気を誇ります。毎年アメリカのカリフォルニア州で開催される「世界一醜い犬コンテスト」でよく選ばれるのがこの犬でもあります。 [外観] 体型については、細身で骨量の少ない「ディアー・タイプ」と、骨太の「コビー・タイプ」があります。被毛については、頭部・四肢・尻尾のみに毛がある「ヘアレスタイプ(無毛)」と、全身に柔らかなベール状の長い被毛に覆われている「パウダー・パフ(有毛)」があります。なお、「ヘアレスタイプ」から「パウダーパフ」が生まれることもあります。体型については「ヘアレスタイプ」も「パウダーパフ」もほぼ同様で、脚が長く細身の体型、立ち耳、サーベル状(カーブして垂れる)の尻尾が特徴的です。「ヘアレスタイプ」は、肌の色は銅色で班が入る場合があります。 [性格] 陽気、温厚、穏やかな性格をしています。しかし、警戒心がやや強く臆病なところがあるため、子犬の時から社会化を適切に行う必要があります。また、無毛のため日差し、寒さ、乾燥に弱いという弱点があるので、服を着せたりオイルやクリームで肌のケアをしてあげることが大切です。 |
ヘアレス・カーラ
※「ヘアレス・カーラ・グランデ」です。
穏やかな性格の希少なヘアレスドッグ
[犬種] ヘアレス・カーラ [原産] ボリビア [別名] カーラ、ボリビアン・ヘアレス・ドッグ [体高] メディオ:36〜41センチほど、グランデ:43〜51センチほど [体重] メディオ:6.8〜13.9キロほど、グランデ:8〜13.5キロほど [寿命] 10~14年 [歴史] ペルービアン・ヘアレス・ドッグにボリビア土着犬の血が取り入れられることで誕生しました。かつては食用にされていた時期がありましたが、現在では家庭犬として親しまれています。とても希少な犬種で、ボリビアの国犬にも指定されています。ケチュア民族の言葉で「服なし」を意味する言葉「カーラ(Khala)」が犬種名となっています。 [外観] 「ヘアレス・カーラ・メディオ(ポッタリータイプ)」と「ヘアレス・カーラ・グランデ(サイト・ハウンドタイプ)」の2種類があり、外観に違いがあります。ただ、両者ともに細身の体型で、長い脚と首、少ない歯、立ち耳、サーベル形の尻尾、頭部にトサカのような毛が生えているのは共通しています。なお、後者の「グランデ」の方が脚が長めです。肌はなめらかで、色は濃いグレー~パープルです。 [性格] 攻撃性は低く、温厚な性格で飼い主や家族には従順です。しかし、警戒心が強いため、見知らぬ人にはよそよそしい態度をとります。また、他の無毛犬種と同じように肌を日差し、乾燥、寒さ、暑さなどから守るために服を着せたりクリーム・オイルなどで肌をケアすることが大切です。 |
ペルービアン・インカ・オーキッド
利口で忠実なヘアレスドッグ
[犬種] ペルービアン・インカ・オーキッド [原産] ペルー [別名] ムーンフラワー・ドッグ [体高] 小:25~40センチ、中:40~50センチ、大:50~66センチほど [体重] 小:4~8キロ、中:8~11キロ、大:11~24キロほど [寿命] 11~12年 [歴史] ペルービアン・インカ・オーキッドのルーツは、インカ帝国にさかのぼります。それまで食用とされた時期もありましたが、インカ帝国では貴族の犬として飼育されていました。現在では、個体数が減少し珍しい犬種のひとつになっていますが、世界中で家庭犬として親しまれています。 [外観] 全身無毛で、頭部とヒゲ以外の毛はありません。肌はなめらかで、肌の色は、ブラック、チョコレートブラウン、グレー、ピンク、タン&ホワイトなどです。他のヘアレスドッグと同様に、細身の体型で、長い脚と首、立ち耳、サーベル形の尻尾、頭部のトサカ状の毛などが特徴的です。 [性格] とても利口で、飼い主や家族には極めて忠実で愛情を尽くしますし、子供とも仲良くできます。ただし、警戒心が強い面があるため、見知らぬ人には対してはとても用心深いです。ペルービアン・ヘアレス・ドッグに比べると肌の色素がとても薄いため、日差しにとても弱いという弱点があります。そのため、他の無毛犬種以上に肌のケアが必要になってきます。日差し、乾燥、寒さ、暑さなどから守るために服を着せたりクリーム・オイルなどで肌をケアすることが大切です。 |
ペルービアン・ヘアレス・ドッグ
インカ帝国の聖なる犬
[犬種] ペルービアン・ヘアレス・ドッグ
[原産] ペルー
[別名] インカ・ヘアレス・ドッグ
[体高]
(小型)25~40センチほど
(中型)40~50センチほど
(大型)50~65センチほど
[体重]
(小型)4~8キロほど
(中型)8~12キロほど
(大型)12~25キロほど
[寿命] 11~12年
[歴史] 諸説ありますが、祖先犬は約2000~3000年前のペルーの土着犬で、インカ帝国においては聖なる犬として崇められていたとされます。古くから貴族によって飼われていた歴史もあります。
[外観] この犬の体のサイズには3つの種類があります。体全体に被毛が無いのが最大の特徴ですが、たいていは頭部にわずかな毛が生えています。全体的にほっそりとした体格をしており四肢はすらっと長く、長い立ち耳となめらかな肌が特徴的です。
[性格] 人との交流を好み、特に飼い主や家族に対しては忠実かつ愛情豊かです。警戒心が強いので優秀な番犬になります。
メキシカン・ヘアレス・ドッグ
神の化身と崇められた神秘的な犬
[犬種] メキシカン・ヘアレス・ドッグ
[原産] メキシコ
[別名] ショロイツクインツレ
[体高]
(小型)25~35センチほど
(中型)35~45センチほど
(大型)45~55センチほど
[体重] オス、メス:9~14キロほど
[寿命] 12~15年
[歴史] この犬は、アステカ帝国が誕生する遥か昔から存在していたといわれています。古くからメキシコの原住民に飼われ、神の化身として崇められていました。ペットや番犬として使われていたほか、いけにえ、食用としても使われたとされています。現在ではメキシコの国犬に指定されており、番犬としても活躍しています。
[外観] この犬の体のサイズには3つの種類があります。ひときわ目をひくのが、被毛の無いなめらかな肌です。ただ、頭部、つま先、尾には少ないながらも毛が生えています。四肢は長く全身は引き締まっており、長い立ち耳が特徴的です。皮膚の色は赤みがかったグレーなどです。
[性格] 温厚で人なつっこく攻撃性が低いため、子供とも相性が良いです。利口で用心深い性格なので、家庭犬としてだけでなく番犬としても優れています。
その他のヘアレスドッグ
その他にもヘアレスドッグの犬種が存在しますが、すでに絶滅、または絶滅寸前になっているようです。
- アフリカン・サンド・ドッグ(絶滅寸前または絶滅)
- エクアドリアン・ヘアレス・ドッグ(絶滅寸前または絶滅)
- エジプシャン・ヘアレス・ドッグ(絶滅)
- セイロン・ヘアレス・ドッグ(絶滅)
- チャイニーズ・ヘアレス・ドッグ(絶滅)
さいごに
これまでご紹介したとおり、ヘアレスドッグはカット・トリミング、抜け毛の掃除などの手間がなくなる反面、肌のお手入れが必要になってくるので、手間が減るばかりではありません。
また、かつては毛が抜けにくい犬・無毛の犬はアレルギーを引き起こしにくいといわれていましたが、それには最近の科学的根拠が乏しいという研究結果が出ています。(※)
(※)2011年にヘンリー・フォード病院の研究によると、毛が抜けにくい犬・無毛の犬とそれ以外の犬種とではアレルゲンの量に差がほとんどないことが判明したとされています。
出典:ヘンリー・フォード病院(英語)
ヘアレスドッグは、個体数が少なく珍しい犬種ばかりですので、今回の記事で身近に感じていただけたら幸いです。