犬の誘拐、盗難、連れ去りは、非常に身勝手で卑劣な行為です。
理由がどうであれ、決して許されるものではありません。
愛犬を守れるのは飼い主だけです。
そこで今回は、犬の誘拐、盗難、連れ去りの被害にあわないために飼い主ができる事をご紹介します。
実際にあった誘拐・盗難・連れ去り事件
新聞やテレビではほとんど目にする事がない、犬の誘拐事件をまとめました。
大半は被害にあった飼い主自身のアクションによって、知る事になります。
- 2006.8月 札幌
ドラッグストア前に繋いでいたフレンチブルドッグが連れ去られる。 - 2008.7月 愛知
2005年3月コーギーを盗み服役し出所後すぐに同じコーギーを盗む。寂しかったからと供述。 - 2008.12月 福岡
公園で放して遊ばせていたチワワを飼い主の目の前でバイクで連れ去る。 - 2009.5月 横浜
空き巣に入られノーフォークテリアが行方不明。 - 2009.7月 埼玉
空き巣に入りチワワも一緒に盗む足にまとわりついてきたから連れ去ったと供述。 - 2009.8月 福岡
庭で遊ばせていたヨーキーとマルチーズを庭に横付けした車に乗せて連れ去る。 - 2009.8月 三重
クーラーをかけロックしていた車内からアイリッシュセッターとボーダーコリーを連れ去る。 - 2009.11月 銚子
家人が在宅仮眠中トイプードル2頭のうちの1頭が連れ去られる。人懐っこい性格で抱っこされるのが好きな子。その後、4年半ぶりに再会できたとのこと。 - 2010.1月 相模原
ホームセンター内のペットショップの看板犬トイプードル連れ去り防犯カメラに不審な親子3人が走り去る映像。 - 2011.4月 大阪
喫茶店の前に繋ぎ一瞬目を離したすきにジャックラッセルテリアを自転車の男が連れ去る。 - 2012.2月 神戸
グルーミング専門学校の顧客のシーズーら13頭が車ごと盗難。 - 2015.12月 木更津
空き巣に入られカニヘンダックス連れ去り、犬とリードだけ盗まれる。2度目の被害(1度目は保護)
こうして見てみると、想像以上に多くの誘拐事件が発生していると思われるのではないでしょうか。
特に小型犬、人懐っこい犬、おとなしく吠えない犬は要注意です。
愛犬家にとっては、決して他人ごとではありません。
誘拐する目的・心理
犯人の目的・心理を知れば、未然に防ぐ方法もおのずと見えてくるはず。
実際に起こった誘拐事件などを見てみれば、誘拐する目的・心理がわかってきます。
<誘拐犯の目的・心理>
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誘拐・盗難・連れ去りの防止策、備えておくこと
それでは、実際に誘拐を未然に防ぐために、どんな対策をしておけばよいでしょうか?
実際に起こった誘拐事件を元に、誘拐の防止策をまとめました。
誘拐の防止策 | 理由・補足 |
外出時、やむを得ず犬を待たせるときは、必ず目の届くところで目を離さない、誰かと一緒に待たせる | 一瞬のすきをついて連れ去るケースが多いため。 |
出来る限り犬だけを車内に残さない、できれば人と一緒に残す | ロックしても車内は危険です。犯人は簡単に鍵や窓ガラスを壊します。 |
ドッグランで目を離さない(話に夢中になったり、他の犬を気にしすぎたりしないように。) | 連れ去り目的でドッグランに侵入する犯人もいます。 |
犬の登録をしておく | 犯人に飼い主である証拠を求められた時に役立つ。 |
迷子札・鑑札・狂犬病注射済票をつける
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行政は「鑑札」に登録されている所有者に連絡する義務がある。通常、飼い主がいることが分かれば警察や交番に届けられるため、直接保健所に届けられることがないので時間を稼げる。犯人を窃盗罪に問える(鑑札装着時)。首輪を外される恐れがあるので、外れにくいチョーカーを室内でも装着しておくとよい。
[関連記事] |
皮下に埋め込むマイクロチップを装着する | チップを読み取る機械がないところも多いが、何より外れることがないので安心。 |
去勢手術をしておく(愛犬の身体の負担などを考慮し慎重に判断) | パピーミル(悪質な繁殖業者)に連れて行かれるのを防ぐ。 |
犬の特徴を捉えた写真・動画を保存しておく | 捜索時張り紙や聞き込みの際に使用するため。飼い主である証拠にもなる。 |
留守番時できれば(開けにくい、持ち出せない)ケージに入れる | 空き巣に入られたときついでに連れて行かれないように。 |
留守の時は庭で放したままにしない | 子どもと犬だけを庭で遊ばせるのも危険です。 |
知らない人に犬の情報を必要以上に話さない | その人が盗み目的の下調べをしている可能性があるため。 |
近くの飼い主同士(ドッグコミュニティー)で不審者情報を共有しておく | 何かあった時に協力しやすい環境を作っておく。 |
災害時の避難ルールを家族と決めておく | 災害時の混乱に紛れて、犬が迷子になったり連れて行かれるのを防ぐため。 |
万が一、誘拐等をされた場合にやるべきこと
警察に被害届・紛失届
空き巣に入られた場合はもちろんですが、連れ去られて行方不明の場合も保護してくれた人が警察に届け出る場合があります。
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保健所・動物管理センター(愛護センター)に届け出、問い合わせ
保護された場合警察と同様情報が集められます。
地元に保護犬団体等があれば協力依頼します。
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管轄の清掃局に問い合わせ
考えたくないことですが、迷子の犬は事故に遭うことが多く、その場合は清掃局に連絡が入ります。
念のため確認しておきましょう。
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張り紙を用意して貼らせてもらう
市役所や県庁、ペットショップ、動物病院の他スーパーや駅、市内の掲示板にも頼んでみる。
SNSを使って情報を拡散、収集する
広範囲にわたって情報を集められますのでうまく活用する。
犬の誘拐は法律上何の罪にあたる?警察は捜査してくれる?
犬の誘拐は、法律上どのような罪になるのでしょうか?
少しお堅い話になりますが、「誘拐した場合」「拾ってそのまま飼った場合」に分けて見ていきたいと思います。
誘拐した場合
●窃盗罪
故意に他人の飼い犬を無断で捕獲して連れ去ると、窃盗罪(刑法第235条)の対象になるので警察に被害届を出して捜査してもらいます。
残念ながら略取及び誘拐の罪(刑法第224条)の各条には”人”と規定されており、犬は誘拐の対象になりません。
●住居侵入罪
家の中の犬を誘拐した場合は、住居侵入罪で警察は介入できます。
●動物愛護管理法違反
動物愛護管理法第44条には、愛護動物を殺したり傷つけたりした場合は二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金、そのほか虐待や遺棄した場合は百万円以下の罰金に処するとあります。
つまり、誘拐した際に犬を傷つけたり虐待すれば、動物愛護管理法違反として処罰されます。
<動物の愛護及び管理に関する法律>
第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
拾った犬を警察に届けず飼った場合
誘拐のようなケースに対して、野良犬のように誰かに飼われているのかわからない犬を拾って、黙って飼った場合はどうなるのでしょうか?
<鑑札など所有者名の記載がない犬> 鑑札など所有者名の記載がない犬を拾って黙って飼った場合は、占有離脱物横領罪(刑法254条 遺失物横領罪、いわゆるネコババの事)となる可能性もあります。 「えー!?ネコババと同じこと?」と思われるかもしれませんが、犬は法律上は「物」として扱われるためです。 ただし、放し飼いで家に帰る習性のある犬の場合は、所有者(=飼い主)の占有を離れていないと判断されるため、鑑札がついていなくともそのような犬を連れ去った場合には、「窃盗罪」になることがあります(最判昭32年7月16日)
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<鑑札など所有者名の記載がある犬> 鑑札など所有者名の記載がある犬を飼った場合は、所有者(=飼い主)の占有を離れていないと判断されるため、「窃盗罪」になります。
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なお、窃盗罪は占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪)よりも罪は重く、かなりの差があります。
- 占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪):1年以下の懲役又は10万円以下の罰金もしくは科料(罰金より軽い刑罰)
- 窃盗罪:10年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。
犬の届け先について
犬を拾った場合は、警察または都道府県等の自治体の窓口(動物愛護センターなど)に届けなくてはいけません。
なお、平成19年の遺失物法改正により、拾った犬が「飼い主の分からない犬」と「飼い主のいると思われる犬」とで、届け先が変更されています。
犬について | 犬の届け先 | |
① | 飼い主のわからない犬 | 都道府県等の自治体の窓口(動物愛護センターなど)または警察 |
② | 「首輪や鑑札のある犬」または「拾われる前まで飼われていたと思われる犬」 | 警察(今までどおり) |
このように、拾われた犬によっては届け先が必ずしも警察とは限らなくなりました。
①「飼い主のわからない犬」は、保健所や動物愛護センターに直接引き取られてしまう場合があり、その場合は3日ほどで処分されてしまうため、一刻も早く警察だけでなく保健所・動物愛護センターなどにも連絡を入れるべきです。
②「首輪や鑑札のある犬」または「拾われる前まで飼われていたと思われる犬」は、これまでどおり警察に届けられるため直接保健所に引き渡されることはないので、時間稼ぎができます。
以上のことから、首輪や鑑札を装着することが愛犬を救うことにつながります。
なお、犬が警察署へ届けられてからの預かり期間が3ヶ月間(改正により6ヶ月間から短縮されれています)を経過しても飼い主が現れない場合は、拾った人の所有物になってしまうので注意が必要です。
犬やねこは都道府県等に引渡しをすることもできるようになりました。(遺失物法 平成19年12月10日施行)
動物愛護法により、飼い主のわからない犬やねこを拾ったときは、東京都動物愛護相談センターに引取りを求めることができます。
また、警察でも一時的にあずかり、東京都動物愛護相談センターに引渡しをすることもできます。
ただし、「くび輪やかん札がある場合」又は「拾われる前まで飼われていたと思われる場合」については、飼い主の調査をしますので、今までどおり交番や警察署へ届けてください。出典:警視庁(遺失物について)
さいごに
もし不幸にも卑劣な犯罪に巻き込まれてしまったら・・、そんな人が近くにいたら・・。
とても恐ろしいことですが、決してありえない話ではありません。
でも、これまでご紹介したように飼い主ができる防止策はたくさんあります。
万が一の時に後悔しないように、今のうちから対策をしておきたいものです。