人の歯石が25日でできるのに対して、犬は3~5日でできると言われています。
犬の歯垢・歯石を放置しておくと口臭が酷くなったり、歯周病を引き起こします。
歯周病が進行すると、繁殖した細菌の毒素が血液に入り込むことによって歯周病、心臓病、肝臓病、脊髄・腎臓病、肺炎、がん、骨粗しょう症など恐ろしい病気の原因になります。
まずは、歯垢・歯石を予防する事を考えてください。
出来てしまった歯垢・歯石はきちんと取ってあげましょう。
今回は「犬の歯石取りの料金・費用と、麻酔と麻酔なし(無麻酔)どちらが望ましいか」についてご紹介したいと思います。
動物病院で歯石取り(除去)をする場合の費用は?保険はきく?
病院で歯石取り(除去)をするには、大きく麻酔をかけて行う方法(麻酔下)と無麻酔下で行う方法の2つがあります。
犬の歯の状態(歯石のつき具合など)によっても料金は変わってきますが、ある程度の相場はあります。
そこで、実際の動物病院の費用をご紹介します。
なお、基本的に美容目的など病気ではない(症状が無い)歯石取りについては保険の適用外になりますが、歯周病などの治療として行われる場合は保険適用となります。
症状がない場合や美容目的の歯石取りの場合は、保険の対象となりません。 ただし、歯周病等の歯科口腔内症状があり、治療の一環と して行う歯石取りは保険の対象となります。
出典:アニコム損害保険株式会社
麻酔をかけて行う場合
●20,000~50,000円ほど
まずは安全に麻酔することができるどうかを確認するために、事前に血液検査や胸部X線、問診などを行います。
全身麻酔ですので、リスクなどの説明もしっかり聞いておきます。
歯石除去の際の、麻酔死の例も報告されています。(特にブルドッグ、パグ、ボストンテリア、チワワ、シーズー、キャバリアなどの短頭種は麻酔死の危険が高いので注意が必要です。)
なお、体重によって料金が高くなる事もあります。
除去の方法については、超音波スケーラー(力は不要)で自然に歯石を取った上で歯肉ケアをした後に、予防のためのコーティングをします。
抜歯の必要がある場合は料金が高くなります。
■動物病院その1
犬全身麻酔下歯石除去(小型犬) 診察 ¥1,000 血液検査 ¥8,500 レントゲン(2枚) ¥5,000 血管確保 ¥3,000 静脈点滴処置保 ¥2,000 静脈点滴 薬価 ¥1,000 ・麻酔前投与薬・導入費用 ¥4,000 吸入麻酔 ¥10,000 歯石処置 スケーリング ¥7,000 歯石処置 ポリッシング ¥3,000 合計 ¥44,500 出典:代官山動物病院
■動物病院その2
年齢・全身状態を考慮して判断いたします。 また当院では必ず、麻酔前検査を実施しております。 麻酔がかけられないと判断した場合は、ほかの方法をご提案いたします。
麻酔前検査 (血液検査・レントゲン検査など) 約 10,000円~ 歯石除去 (スケーリング・ポリッシング・麻酔料込み) 20,000円 抜歯・縫合処置 (複根歯抜歯、縫合などの場合) 約 10,000円 出典:松戸うがた動物病院
■動物病院その3
●歯石除去 ※完全予約制※ ※日帰り処置となります※
犬 10kg未満 20,000円 10~20kg未満 25,000円 20kg~ 30,000円 猫 18,000円 ※上記料金には、麻酔・注射(抗生剤)・静脈カテーテル留置・術中点滴の料金がすべて含まれております。 ※口腔内の状態により、抜歯・鎮痛剤の注射・施術後の抗生剤の内服等が必要となる場合もあります。
出典:かまやち動物病院
■動物病院その4
料金例
- 5歳5kgのワンちゃん、ネコちゃんで体調で気になることがない場合。
麻酔前検査6,300円、歯石除去、抗生剤
合計 ワンちゃん29,050円+税 / ネコちゃん24,800円+税 (初診の場合+500円)
- 10歳5kgのワンちゃん、ネコちゃんで高齢なので麻酔が心配な場合。
麻酔前検査13,800円、歯石除去、抗生剤、静脈点滴
合計 ワンちゃん38,550円+税 / ネコちゃん34,300円+税 (初診の場合+500円)出典:兵庫ペット医療センター
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無麻酔で行う場合
●3,000~8,000円ほど
麻酔をかける場合に比べると、麻酔を使用しないため料金はだいぶ安くなります。
また麻酔下の処置は体に負担がかかり体力も必要なので、老犬や持病のある犬の安全性のニーズから、無麻酔の歯石除去に力を入れている病院も増えています。
A動物病院
5㎏未満 4,000円/5-10㎏未満 4,500円/10-20㎏未満 5,000円/ 20-30㎏未満 5,500円/ 30㎏以上 7,000円 |
B動物病院
同病院でワクチン・フィラリア予防をした犬 2,160円~ 上記以外 10,800円~30分~1時間/1回 |
C動物病院
超音波スケーリング(軽度・30分以内) 6,825円 |
D動物病院
無麻酔コース 20分程度 8,000円 |
E動物病院
3,000円~ フッ素コート 800円別途(初回無料) |
F動物病院
10㎏以内 1,500円/一部分、 3,000円/全体
10㎏以上 2,500円/一部分、 5,000円/全体 |
G動物病院
スケーリング・ポリッシング・処置後検診 6,000円(初診時カルテ作成料別途) |
H動物病院
スケーリング・ポリッシング・処置後検診 7,500円 (初診料として1,500円別途) |
麻酔下の場合と麻酔なし(無麻酔)の場合、どちらの処置が望ましい?
歯石除去を行うにあたって、「麻酔下(全身麻酔)」で処置を行う方法と「無麻酔」で歯石取りを行う方法がありますが、どちらの方法が望ましいのかということについては、獣医師さんの間でも意見が分かれています。
当然ながら無麻酔の場合、歯周病が進行した歯の治療には痛み・苦痛は避けられません。
人間でも治療のためと分かっていても、歯の治療には痛みや恐怖を感じる人がほとんどだと思います。
人間でさえすごく嫌な歯の治療なのに、わけもわからず身動きがとれないように押さえつけられ、鋭いスケーラーなどで歯茎をチクチクザクザクやられるのは、犬にとって痛みはもちろんのこと、想像を絶する恐怖でしょう。
獣医歯科学を専門とする医師らから、無麻酔での治療はむしろ動物に肉体的・精神的苦痛を強いることになるという指摘があります。
[中略]
無麻酔での歯石除去の試みから、麻酔なしでは治療中に動物の急な体動を防ぐのは困難で、スケーラーにより動物の舌や口腔粘膜、顔面を傷つける危険性があることが分かりました。
[中略]
麻酔反対の医師は、麻酔時に現れる不快な症状が動物の体を傷つけ、場合によっては死亡に至る例もあると主張します。また、合併症で飼い主とトラブルになることを憂惧しあえて麻酔を避ける医師もいるかもしれません。 全身麻酔の重篤な合併症の発生頻度は極めて稀なので、全身麻酔下で治療を行うメリットの方が明らかに大きいです。 合併症のリスクより患者の利益が大きく上回るので全身麻酔導入は正当化されます。
出典:日本小動物歯科研究会
そもそも、歯周病の予防・治療するためには「無麻酔」での歯石取りは不可能なので、「麻酔下」での処置が必要ともいわれています。
これは、無麻酔では歯の裏側や歯周ポケット(歯と歯茎の間)は処置できないため、歯周病が進行している犬は治療が出来ないからです。
いくら見た目だけ歯が綺麗になっても、歯周ポケットなど隠れた場所の治療をしなければ歯周病の根本的な治療・予防にならないということです。
よって、無麻酔での処置は歯周病がそれほど進行していない場合(歯周ポケットや歯の裏側などの治療が必要ない)ときにのみ行われるものだといえます。
この後、細かな歯石を丁寧に取り、そして「歯周ポケットの歯石を取り」、「歯周ポケット内の歯肉に『わざと傷をつけて』出血させて」いきます 。 そのことで歯周病で深くなってしまった歯周ポケットを小さくするのが治療になります。 [中略] そしてこの歯周ポケットの処置は「無麻酔では絶対に無理」なのです。 だって絶対に痛かったりしますし、処置中に動いて歯周ポケットを突き破ったりなんて危険がありますから。 ですのでスケーリングには歯周ポケットの処置の為に全身麻酔が必要なのです。
[中略]
そしてその歯周病予防、治療のためには「無麻酔での処置は不可能」ということは知っておいてください。
出典:風の動物病院のブログ
また、無麻酔の場合は削った歯石が気道に入り込んで誤嚥性肺炎になって命を落とす場合もあるそうです。
麻酔をかけた処置の場合は、気道にチューブを通すので歯石が気道に入り込む心配はありません。
無麻酔は麻酔下での処置と違って命の危険が無いと思われがちですが、そうではなく無麻酔であっても麻酔下の処置と同様に、命の危険はゼロではないということですね。
気道に入ってしまえば、誤嚥性肺炎になって命に関わることもあります。
「でもそれって麻酔してても同じじゃないの?」
いやいや、全身麻酔する時は気管チューブと言われる管を気管に通しているんで、 それで歯石の入り込む隙間が無くなっているんですよ~。
では、実際に無麻酔でどのような事故・不都合がおきているのでしょうか?
無麻酔下での歯科治療に関して「日本小動物歯科研究会」がアンケートを行っており、その内容が公表されています。
弊害 考察 下顎脱臼・骨折 事前に口腔X線検査やプローブによる検査 をせずに無理やり抑えたことなどによるも のと思われる 歯冠破折 力任せに抜歯を試みた、あるいは不適切な 歯科器具の使用の可能性 歯の動揺・ 歯周病悪化 歯周ポケット内の歯垢・歯石は除去できな いため、さらに感染などが悪化し進行が早 まった 性 格 が 変 わ る・ ケア不能 無麻酔で強い痛みを加えているために、ト ラウマになった恐れがある 出典:日本小動物歯科研究会
長くなってしまいましたが、以上についてまとめましたので参考にしていただければと思います。
麻酔下 |
<メリット>
<デメリット>
|
無麻酔下 |
<メリット>
<デメリット>
|
このようにしてみてみると、麻酔下(全身麻酔)の処置は「合併症・麻酔死のリスク」は残りますが、無麻酔における「無麻酔での誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスク、肉体的・精神的苦痛、歯周病の治療を完全に行えない等」の大きなデメリットが目立ちます。
大変難しい問題を含んでいると思いますが、歯周病が進行している場合には、歯周病を完全に治療・予防するのであれば、かかりつけの獣医さんとよく相談し麻酔リスクの事前検査を慎重に行った上で、麻酔下での処置を受けることが望ましいのではないでしょうか。
トリミングサロン、しつけ教室、ペットショップなどで歯石取りをする場合の費用
■トリミングサロン
シャンプーコースやカットコース等のオプションとして設定されているところは、トリミング料金+1,000円~3,000円程です。
■トリミングサロン以外(しつけ教室、ペットショップなど)
5,000円~20,000円ほど
※ 無麻酔の歯石除去は獣医師免許なしで行えることから、トラブルが報告されている店があり注意が必要です。
自宅で自分で歯石取りする場合の費用
歯周病の原因となる歯垢や歯石を予防するために、自宅でのオーラルケアが効果的です。
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スケーラー
■犬用 3,000~5,000円位 ■人間用 2,000~3,000円位
スケーラーの費用は、犬用は3,000~5,000円位ですが、人間用は2,000~3,000円位で安価な上に質も良いので人間用のものを使用しても構いません。
刃先が尖っていて狭いものを選びます。
使い方としては、歯石をこそげ取るようにして使います。
使用後には、しっかりと煮沸消毒をして乾燥させます。
ただし、安全に使うためにはある程度の技術を要するため、歯茎を傷つけないように細心の注意を払う必要があります。
犬の歯や歯茎は傷つきやすいので、技術に自信がある方でない限りはスケーラーでの歯石取りはお勧めはしません。(出血の危険があり、歯に傷がつくことによってかえって歯石がつきやすくなる)
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鉗子(カンシ)
■主流 1,000~2,000円 ■プロ仕様 8,000円以上
鉗子(カンシ)の費用は、1,000~2,000円の物が主流ですが、プロ仕様で8,000円以上の物もあります。 はさみのような形で先にギザギザがありますが、先端が丸いものを選びましょう。
使い方は歯に当てて挟みパチンと外す要領ですが、慣れないうちは慎重に扱いましょう。
器具を使用した後にはよく煮沸消毒して乾燥させる必要があります。
スケーラーと同様に、技術に自信のある方でない限りうっかり歯や歯茎を傷つけてしまうおそれがあるため、お勧めはしません。(出血の危険があり、歯に傷がつくとかえって歯石がつきやすくなる)
歯石取りペンチ
■9,000円ほど
鉗子と同様の使い方です。 ペンチで歯石を取った後にティッシュで優しく拭き取り、仕上げにスケーラーで細かい歯石を落とし、最後に削りかすをふき取ります。
スケーラー、鉗子(カンシ)と同様に、技術に自信のある方でない限り、歯や歯茎を傷つけてしまうおそれがあるため、お勧めはしません。(出血の危険があり、歯に傷がつくとかえって歯石がつきやすくなる)
歯石取りスプレー
■2,000円~6,000円ほど
スプレーの費用は2,000円~6,000円ほどで、様々な種類(直接スプレーして歯ブラシで擦るタイプ、口の中にスプレーするだけのタイプなど)のものがあります。
スプレーの場合、毎日行う必要がある上、4~6か月使い続けるので時間がかかります。
何本も使っていくと、動物病院と同じくらいの費用がかかる場合もあります
ただ、歯石取りスプレーは、スケーラーや鉗子(カンシ)で歯石を取る方法に比べて、誤って犬の歯や歯茎を傷つける心配がないため、最近注目を集めています。(成分には十分注意した方が良いです。)
歯ブラシなどと併用すると効果が高いようです。
歯石取り用ジェル
■3,500円~4,000円ほど
塗りこんで歯石を浮かせるタイプや、オイルで歯石を溶かすタイプなどがあります。
歯石取りスプレーと同様に、スケーラーや鉗子(カンシ)のように歯や歯茎を傷つける心配がありません。(成分には十分注意した方が良いです。)
歯ブラシなどと併用すると効果が高いようです。
歯石取りシート
■2,500円ほど
水にぬらしたシートで優しく拭くだけというものです。
デンタルケアガム
ガムはオーラルケアの補助や、歯石予防のためのものです。
与え方は第4前臼歯を狙い、人が持ったまま噛ませてあげます。
デンタルケアガムはお手軽ですが、あくまでも歯磨きの補助アイテムですので、それだけで歯の汚れや歯石を完全に落とせるわけではありません。
さいごに
冒頭でもお伝えしましたが、歯周病が進行すると犬の健康に多大な悪影響を及ぼします。
逆に言えば、歯垢や歯石の予防(オーラルケア)をしっかりしてあげることで、愛犬を恐ろしい病気から守ることにつながります。
今一度、犬のオーラルケアの重要性を認識していただければ幸いです。