犬の何気ない仕草ってとても可愛いですよね。
でも、中にはちょっと気になる仕草もあります。
例えば、何も食べていないのに口をくちゃくちゃさせるというもの。
これには、実にさまざまな原因があるんです。
そこで今回は、犬が口をくちゃくちゃする原因をまとめましたので、ご紹介したいと思います。
愛情表現、甘えている、リラックス状態
大好きな飼い主に撫でられると、犬は口をくちゃくちゃさせることがあります。
これは、お母さん犬の母乳を飲んでいた時の名残で、甘える気持ちの表れ(愛情表現)です。
甘えん坊のコに多いといわれています。
これは非常にリラックスしている状態で、眠る前にくちゃくちゃする犬もいます。
また、愛情表現(口や手を舐めるなど)を拒否されるなどした場合、その満たされない気持ちの表れとして口をくちゃくちゃするともいわれています。
相手を落ち着かせようとしている、反省している(カーミングシグナル)
犬が口をくちゃくちゃする仕草は、飼い主に叱られているとき等に「落ち着いてください。反省してます」という心理を伝えています。
この仕草はカーミングシグナルといいます。
カーミングシグナルとは、犬が自分や相手の気持ちを落ち着かせたり、あるいは相手に敵意が無いことを伝えたり、自分のストレスを軽減させようとして行う表情や行動のことです。(このうち口をくちゃくちゃしているのは、おもに相手に敵意がないことを伝えようとしています)
犬が口をクチャクチャさせていたら、叱られていることは理解していて反省している証拠(ストレスも感じている)なので、それ以上叱るのはやめてあげましょう。
なお、口をクチャクチャさせている時と似た心理状態(相手をなだめている、ストレスを受けている)のときには、次の仕草も一緒に行うことあるので参考にしてください。
- 目を細めたりまばたきをする
- あくびをする
- 歯をカチカチ鳴らす
- 口をパクパクと開閉する
食べ物が歯茎などにくっついている
食後にくちゃくちゃしているときは食べ物が歯茎などにくっついていることがあり、多くはその違和感が原因です。
あまり長い間くちゃくちゃしているようであれば口の中を見てあげて、食べ物がくっついていたら取ってあげましょう。
異物を噛んでいる
よくあるのが、抜けた自分の毛が口の中に入りくちゃくちゃと噛み続けているケースで、抜け毛の多い犬種に起こりがちです。
また、口をくちゃくちゃしている犬を、飼い主が不審に思ってよく見てみたら、イヤーピース(イヤホンのふにふにした部分)を噛んでいたというケースもあります。
有害な異物を飲み込んでしまうこともあるので、犬が口をくちゃくちゃとしている場合には、異物が口の中に入っていないか、まず確認するようにして下さい。
気分の優れないとき、お腹の調子が悪いとき、
気分の優れないとき、お腹の調子が悪いときに、口をくちゃくちゃするときがあります。
長期間くちゃくちゃしているのなら、なんらかの病気のサインかもしれません。
車酔い
ワンちゃんも人間と同様に、車酔いをします。
車酔いをすると、主に次のような症状が出ます。
このような症状が出たら、車を止めて休ませてあげましょう。
- 口をくちゃくちゃする
- あくびが多い
- よだれが垂れる
- 落ち着かない様子でソワソワする
歯の生え代わり
生後4カ月~1歳くらいの子犬であれば、ちょうど歯の生え変わりの時期ですので、その違和感が原因で口をくちゃくちゃしていることがあります。
お口の中を開いて、歯が抜けていないか確認してみて下さい。
口内炎
犬も人間と同じように口内炎になります。
犬はその痛みや違和感から、口をくちゃくちゃさせるようになります。
口内炎の症状は人間とほぼ同じで、主に次のとおりです。
- 口をくちゃくちゃする
- 食事中に痛がる
- 食欲が減退する
- 口の中が腫れる
- 口内に潰瘍、水疱、発疹などができる
- 口臭が強くなる
- よだれが大量に出る(血が混じることもある)
舌炎
舌炎の多くは、硬いものや尖ったもので舌を傷つけるなどの外傷が原因です。
細菌や寄生虫の感染、偏った栄養によっても発症することがあります。
舌炎には、主に次のような症状があります。
- 口をくちゃくちゃする
- 口臭がひどくなる
- 食事中に痛がる
- 食欲が減退する
- 舌が赤く腫れる、白くただれる
- 舌を出したままにする
- よだれが大量に出る(血が混じることもある)
歯周病、歯槽膿漏、大きな歯石がついている
歯周病、歯槽膿漏、大きな歯石がついているなどが原因でくちゃくちゃしていることがあります。
特に歯周病、歯槽膿漏で歯が抜けそうな状態だと、くちゃくちゃすることが多く、老犬に起こりがちです。
歯周病や歯槽膿漏の症状には、次のようなものがあります。
- 口をくちゃくちゃする
- 口臭がひどい
- 歯ぎしりをする
- 歯がグラグラする
- ヨダレが多い
- 歯茎がふくらむ、赤い、出血する
- 顔が腫れる
- くしゃみ・鼻水・鼻出血
- 食べるのが遅い
- 固いものを食べたがらない
症状がひどくなると、歯が抜けたり、血管に口の中の細菌が入り込んで心臓病、腎臓病、肝臓病、細菌性肺炎などを引き起こすこともあるので、注意したい病気です。
口腔腫瘍(こうくうしゅよう)
口の中に腫瘍があると、口をくちゃくちゃすることがあります。
歯茎、舌の表・裏、喉などにしこり(腫瘍)ができます。
口腔腫瘍の症状は次のとおりです。
- 口をくちゃくちゃする
- 口臭が酷くなる
- よだれが多くなる
- 食欲減退
- 口周り・歯茎からの出血
- 食べる時にエサをこぼしやすくなる
悪性の場合は転移が速く生命にかかわりますので、気になる症状があれば病院に連れて行ってあげてください。
胆泥症・胆石症(たんでいしょう・たんせきしょう)
胆泥症・胆石症(たんでいしょう・たんせきしょう)の場合も、口をくちゃくちゃすることがあります。
■胆泥症(たんでいしょう)
胆嚢内にある胆汁(もともとはサラサラ)の成分が変化して、泥のような状態になってしまうこと
■胆石症(たんせきしょう)
胆泥症がさらに進行して、結晶化し石のような状態になってしまうこと
胆泥症・胆石症の症状としては、次のとおりです。
この病気は、初期症状が無いにも関わらず、生命の危険にかかわる可能性があるため、もしこのような症状が見られたらすぐに病院に連れて行ってあげてください。
<症状>
○嘔吐・下痢;黄色~緑色液体や未消化物を吐く、水様~泥状の便 など
○脂肪便;白色の便
○元気・食欲の低下・廃絶;食べない、食べる量が減った など
○腹部疼痛;お腹を触ると嫌がる・威嚇する・口をクチャクチャさせる、歩かない など
○腹囲膨満・腹圧上昇;お腹が膨れている、呼吸が荒いようにみえる など
○発熱;耳介・腋の下・腹部などが熱い など
○黄疸;耳介の内側・歯肉・眼の白いところ(強膜)が黄色 など
○血圧低下・ショック;ぐったりしている、耳介の内側・歯肉・眼の白いところ(強膜)が白い など出典:赤羽ペットクリニック
てんかん(チューインガム発作)
口をくちゃくちゃするのは、てんかん(癲癇)の焦点性発作の一つです。
■てんかんとは? てんかんとは、脳の神経細胞に流れている微量の電気が何らかの原因によって異常な電気ショートを起こして脳が興奮状態になり、身体のコントロールがきかなくなってしまうことです。 |
てんかんの原因は、大きく次の2つの種類に分類されます。
特発性てんかん
脳に構造上の異常が見つからず、原因不明のものです。
これには、遺伝的な要素の関連があるといわれています。
犬のてんかん発作のほとんどはこの特発性てんかんで、一般的に生命の危険はないといわれています。
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症候性てんかん(二次性てんかん)
脳の構造上の異常が存在して、それが原因で起こるものです。
脳の構造上の異常は、次のような病気が原因で起こります。
命にかかわるような病気が多いので要注意です。
- 脳の外傷
- 脳腫瘍
- 脳炎(パグ脳炎(壊死性脳炎)、肉芽腫性髄膜脳炎、ジステンパー脳炎など)
- 水頭症
- 肝性脳症
- 中毒
- 尿毒症
- 先天性の脳の奇形
- 上記のほか、脳に異常をもたらすさまざまな病気
■てんかん発作とは? てんかん発作とは、てんかんによって身体に起こる発作のことをいいます。 |
てんかんの発作の種類は、大きく次の2つに分類されます。
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全般発作
脳の全体が、過度な興奮を起こして発生する症状です。
発作が全身に及び、完全に意識を失います。
主な症状は、次のとおりです。
- 四肢・体がぴんと伸びて倒れる
- 白目をむいて全身をガクガク震わせる
- 四肢の屈伸、泳ぐかのようにバタバタさせる
- 失禁・脱糞する・泡を吐く
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焦点性発作(部分発作)
脳の一部分が、過度な興奮を起こして発生する症状です。
全般発作のように全身に発作が起こるわけではなく特定の場所に発作が起こり、意識は残ることが多いです。
主な症状は、次のとおりです。
- 口をくちゃくちゃする
- 急に上を見て口をパクパクする(蝿咬み)
- 顔面や肢の痙攣
- 散瞳(瞳孔が開いたままになる)
- 尾追い
- 後ろ足の一部が勝手に上がる
- チック
くちゃくちゃ動作は、咀嚼運動(チューインガム発作)とも呼ばれます。
くちゃくちゃ動作の原因が「症候性てんかん」の場合は、命の危険にかかわる病気かもしれませんので、動物病院で診てもらってください。
その際には、てんかんの様子・時間などの詳細をメモするか、動画で撮影するなどして、獣医さんに細かい内容を伝えるようにすると診断もしやすいです。
さいごに
犬が口をくちゃくちゃさせる原因として代表的なものをご紹介しましたが、これらが全てというわけではありませんのでご注意ください。
愛情表現から深刻な病気まで、その原因はさまざまです。
「犬が口をくちゃくちゃする」という何でもない動作が、危険な病気のサインかもしれないということを、頭の片隅に入れておいていただければと思います。
万が一危険な病気だった場合、早期発見につながれば幸いです。