人間にとってはなんてことない音でも、なぜか犬は恐怖に怯えている・・・ワンちゃんを飼われている方であれば、そんな経験が1度はあるのではないでしょうか?
単に「怖がってるだけ」と思っていると、犬にあまりにも強いストレスが加わった場合、脱走を企てたり、思わぬ病気になってしまうおそれがあります。
そこで今回は、犬が嫌がる・怖がる音の原因や対処法などを調べましたので、ご紹介したいと思います。
犬が怖がる・嫌いな音ってどんなものがある?
犬は、破裂音、自然界に存在しない人工的・機械的な音などが苦手です。
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ちなみに、うちのワンコ(トイプードル)は、凹んだペットボトルが元に戻るときの「ベコッ!」という音がとても怖いみたいです。
ペットボトルを冷蔵庫から出すのを見ただけで、尻尾をおろした情けない姿で、隣の部屋に逃げていきます(苦笑)
怖がっているときの症状は?
犬は苦手な音を聞いて強いストレスを感じると、次のような症状・行動・生理現象を起こす場合があります。
【 行動 】 【 体の症状 】 【 生理現象 】 |
うちのワンコはかなりのビビり屋で、身体をくっつけるだけでは安心できないのか、私の身体によじ登ってきて、最終的には肩の上に乗ってぶるぶる震えている状態になります(^^;
怯え方にはだいぶ個体差があるようですね。
なお、さらに酷くなるとストレスが引き金となって、次のような病気を発症することがあるので要注意です。
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音を怖がる理由は?
なぜ、犬は人間よりも音を怖がるのでしょうか?
それには、次の大きな4つの理由があると考えられています。
人間よりも犬の方が聴覚が優れているため
犬は人間とは比べ物にならないほど優れた聴覚をもっています。
【音を聞き取れる距離】
犬の聴覚は、人間の約4倍といわれています。
これは、犬は人の約4倍も離れた距離の音を聞きとれる、という意味です。
【音を聞き取れる方向】
音を聞き取れる方向も、人間より優れています。
- 人:16方向
- 犬:32方向
【音を聞き取れる範囲(周波数)】
犬は音を聞き取れる範囲(周波数)も人間よりはるかに広いです。
- 犬:65~50,000ヘルツ
- 人:16~20,000ヘルツ
自然界に存在するいろいろな周波数の音の中から、犬は65~50,000Hz(ヘルツ)の周波数の音をとらえることができるといわれています。
人の耳は16~20,000Hzの範囲までといわれ、普段わたしたちが会話をしている周波数は200~4,000Hzで、周波数の多い方が高音として聞こえます。
犬の聴力は犬種による違いはほとんどないとされ、また、体の大きさにも相関性はないようです。犬にとってもっとも感度がよい周波数は8,000Hz付近といわれ、65Hz以下は聞こえないようです。周波数から見ても人と比べ、犬のほうが数倍高い周波数を聞き分けるかがわかります。よく知られる犬笛は人の耳では聞くことができない超高音波(約30,000Hz)が用いられています。出典:日本警察犬協会
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幼少期に慣れさせていないから
幼少期(生後3ヶ月ごろまで)に音を触れ合う機会が少ないと、音を怖がるようになるといわれています。
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後天的なもの(トラウマ)
過去に「音」と「嫌な体験」が結びついてトラウマになるという後天的なものです。
犬は音の原因が分からないので、「音」と「嫌な体験」が結びつきやすいといわれています。
例えば・・・
- 音に怖がったことに対して、飼い主に叱られた
- 家のチャイムが鳴る ⇒ 家の訪問者に恐怖を感じた
- 留守番しているときに、雷や花火などの音を聞いて恐怖を感じた
などが考えられます。
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遺伝的なもの
破裂音などの大きな音を怖がるのは、野生時代に刷り込まれた「猛獣の咆哮や銃声など」が原因ともいわれています。
音恐怖症の対処法は?
犬が怖がる音にはいろいろなものがありますが、ここでは「たいていの音」に使える対策をご紹介します。
音の「種類別」の対策は、後ほどご紹介します。
脱脂綿で耳栓をする
脱脂綿を犬の耳につめて、耳栓がわりにします。
音が聞こえにくくなるので効果はありますし、何よりお手軽です。
ただし、耳の病気があるときは避けてください。
安心できる場所を作ってあげる
オオカミは洞穴(ほらあな)や岩穴(いわあな)を巣として暮らしていました。
犬にもこの習性は強く受け継がれているので、狭くて暗い物陰に居ると安心できるのです。
クレート、布を天井のようにして覆ったサークル、ベッドや家具などの隙間など、犬が安心できる場所を普段から作るようにしてあげて下さい。
「脱感作療法」と「逆条件づけ」
CDやICレコーダーなどで、犬が苦手な音を小さな音量で聞かせ、数日にわたってだんだんと音を大きくしていくことで、恐怖感を減らして慣れさせていきます。(脱感作療法)
音を聞かせてながら褒めたり好物をあげて、苦手な音に良いイメージを根付かせます。(逆条件づけ)
こちらは、「イヌが聴くだけで克服できる生活音トレーニング用CD」で、雷・花火の他にもさまざまな生活音(アウトドア編:電車、救急車など インドア編:洗濯機、ドライヤーなど)が収録されています。「脱感作療法」「逆条件づけ」でのトレーニングに便利です。
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※注意点
脱感作療法中に、恐怖感を与えると逆に症状が悪化してしまうことがあります。そのため、脱感作療法は慎重に行わなければいけません。特に、雷や花火の時期は避けるべきです。
バッチフラワーレメディを使う
バッチフラワーレメディとは、緊張や恐怖感を和らげて精神の安定をもたらす植物のエッセンスで、自然療法のひとつです。
薬効成分が含まれているわけではなく、毒性や副作用はないので安心して使用できます。
医学的な根拠はないのですが、約70年にわたる実績があり、世界の60ヶ国以上の医療機関で使用されています。
「抗不安薬」や「鎮静剤」を処方してもらう
あまりにもひどく怯える場合には、動物病院で「抗不安薬」や「鎮静剤」などを処方してもらう方法もあります。
音の種類別、対処法は?
ここでは、音の「種類別」の対処法をご紹介します。
雷・花火の音
■カーテンと雨戸を閉める
■なるべく一人にさせないようにする
■音が聞こえにくく、安心できる場所を作ってあげる
■飼い主は普段と同じ態度をとる
飼い主が怖がったりすると「音=怖いもの」と認識してしてしまいます。逆に優しくすると、「怖がってもいいんだ」と学習してしまいます。
ですので、恐怖を助長させないために「一緒に怖がらない、叱らない、なだめない」を心がけましょう。
■おやつやオモチャをあげて、気を紛らわせる
■「ストーム・ディフェンダー・ケープ」を着せる(雷のみ)
「ストーム・ディフェンダー・ケープ」とは、特殊素材が身体にたまった雷による静電気を取り除くことで、不快感を軽減させる犬用の服です。雷のときに効果的です。
■「サンダーシャツ」を着せる
「サンダーシャツ」とは、身体を適度に圧迫させることで安心感を与える犬用の服です。不安による無駄吠えにも効果があるとされています。
■タオルやブランケットなどで包む(ボディラップ)
「ストーム・ディフェンダー・ケープ」や「サンダーシャツ」でなくても、タオルやブランケットなどで身体を優しく包んであげる(ボディラップ)ことで、気持ちを落ち着かせる効果があります。
こちらの動画は、長めの布状のものを使う方法です。
簡単で、お金もかからないのでおすすめです。
※適度な圧迫が効果的です。ワンちゃんの様子をみながら、強く圧迫しすぎないように注意してください。
【雷の恐怖症について】
雷を怖がる理由としては、音だけでなく、振動、空気中の静電気や気圧の変化などにもあると考えられています。
そのため、雷恐怖症の克服は特に難しく、恐怖症状は2歳前後に発症しその後も年を重ねるにつれて悪化するおそれがあるといわれています。
【花火の恐怖症について】
犬は破裂音は苦手ですし、特に突然起こる花火を怖がる犬は多いです。
アニコム障害保険株式会社の調べによると、毎年8~9月には、犬の脱走・迷子が増えるそうです。これは、雷や花火の音に驚いた犬が脱走するケースが多いためだといわれています。
夏場は、ペットの迷子に要注意
月別に発生件数を集計したところ、8月、9月は多く発生していることがわかりました。犬の場合は、「雷の音に驚いて逃げてしまった」「花火大会の花火の音に驚いて逃げてしまった」など大きな音に驚いて迷子になってしまったという事例が多く見られました。
出典:アニコム損害保険株式会社
ですので、犬がパニックになって脱走しないように、戸締りはきっちりとしておきましょう。
屋外犬であれば、早めに家の中に入れてあげましょう。
散歩中であれば首輪やハーネスが外れないように注意し、できればしっかりと両手で抱きかかえましょう。
工事の音
■工事の時間帯には、犬を散歩やお出かけに連れていく
■雨戸やカーテンを閉めて、ラジオやテレビをつけてボリュームを大きめにするなど、工事音が気にならないようにする。
ただ、工事は長期間に及ぶ場合が多いので、徐々に慣れてくるでしょう。
家のチャイム音
■チャイム音が大きすぎる場合は、音量を小さめにする
■来客時間がわかっていれば、あらかじめ外に出て待つ
掃除機
■次のように徐々に掃除機に慣れさせる。
電源を切った掃除機の近くでごはん・おやつをあげる
⇒ 掃除機の音を聞かせながら、ごはん・おやつをあげる
テレビの大きな音
■音量を下げる
あまりにも怖ければテレビから遠ざかるので、それほど気にしなくても大丈夫です。
家族間の口論の声
■口論になりそうなときは、犬とは別の部屋に移動する。
犬は、普段と違う声のトーンを敏感に察知して不安になります。犬は古くから集団で生活していた習性があるため、家族の喧嘩を察知すると、「安心して生活できなくなるのではないか」と感じて大きなストレスを感じてしまいます。
さいごに
あまりにも恐怖症状がひどい場合には、動物病院で抗不安薬や鎮静剤を処方してもらうことも考えた方が良いでしょう。
恐怖症の克服は簡単ではなく、根気強く時間をかけて治していくことが必要だといわれています。
犬が苦手な音から受けるストレスは、人間が思っている以上に大きなものです。
ストレスは犬の抵抗力を低下させるため、病気の発症や持病の悪化にもつながります。
愛犬が強いストレスを受けないように、ぜひ日頃から心配りをしてあげて下さいね。