白目をむいて、「わぅ…わぅ…」と寝言をつぶやいたかと思えば、前足が激しく動き出す。
このような飼い犬の状態を見て、驚かれた飼い主さんも多いでしょう。
ただ夢を見ているだけなのか、深刻な病気のサインなのか、知っておきたい情報をお話していきます。
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犬のてんかんの前兆と、発作後の寿命は?
犬が寝ている時に痙攣する原因
睡眠中の飼い犬に起こる痙攣には、どのようなものがあるのでしょうか?
ノンレム睡眠とレム睡眠
この2つの睡眠状態は、鳥類と哺乳類に存在して、愛犬は寝ているときに、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)を交互に繰り返しています。
眠りが深いノンレム睡眠のときは、脳波はおだやかな波になり、呼吸は規則正しく、脈拍は遅くなり、血圧体温ともに低下します。
眠りの浅いレム睡眠のときはどうでしょうか。
レム睡眠のとき、寝ている状態であるにもかかわらず、脳は起きている状態に近いのです。
寝ているのに眼球がキョロキョロ動いている愛犬をみて、驚いた飼い主さんもいるでしょう。
呼吸や脈拍は乱れ、眼球はキョロキョロ動き、耳、足などがピクピクと痙攣を起こす。
手足がバタバタ動き出すと、本当にうちの子は大丈夫なのだろうかと心配になりますが、大丈夫です。これがレム睡眠なのです。
ちなみに、犬の睡眠時間ですが、成犬で12~15時間、小犬や高齢犬だと18時間程度だといわれています。
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てんかん
てんかんは、なんの前触れも、前兆もなく起こります。
ですが、寝入るころ、睡眠中、寝起きに多いと言われています。
てんかんの発作を起こした飼い犬を見ると、飼い主さんは死の恐怖を感じると思います。
私自身も発作をはじめて目にしたときは、強いショックを受けました。
見たことがないと理解できないかもしれませんが、なんの知識もないままでいると、愛犬の発作時に正しい対応ができません。
それでは、てんかんがどのようなものか見ていきましょう。
■てんかんとは?てんかんとは、脳の神経細胞に流れている微量の電気が何らかの原因によって異常な電気ショートを起こして脳が興奮状態になり、身体のコントロールがきかなくなってしまうことです。
てんかんの原因は、大きく次の2つの種類に分類されます。
【特発性てんかん】
脳に構造上の異常が見つからず、原因不明のものです。
これには、遺伝的な要素の関連があるといわれています。
犬のてんかん発作のほとんどはこの特発性てんかんで、一般的に生命の危険はないといわれています。
【症候性てんかん(二次性てんかん)】
脳の構造上の異常が存在して、それが原因で起こるものです。
脳の構造上の異常は、次のような病気が原因で起こります。
命にかかわるような病気が多いので要注意です。
- 脳の外傷
- 脳腫瘍
- 脳炎(パグ脳炎(壊死性脳炎)、肉芽腫性髄膜脳炎、ジステンパー脳炎など)
- 水頭症
- 肝性脳症
- 中毒
- 尿毒症
- 先天性の脳の奇形
- 上記のほか、脳に異常をもたらすさまざまな病気
てんかん発作は、大きく次の2つの種類に分類されます。
【全般発作】
脳の全体が異常な興奮状態になり、発作が全身に及びます。
前足と後ろ足が、ピーンと伸びて正常な姿勢を保てません。
後ろに引っくり返ったり、横に転がったりしても、犬自身ではどうすることもできません。
やがて、犬かきをするような動きになります。
個体差にもよりますが、数分~十数分で元に戻ります。
【焦点性発作(部分発作)】
脳の一部分が異常な興奮状態になり、特定の部分に発作を起こします。
したがって、全身のけいれんはなく、前足だけ、顔面だけなど、体の一部がけいれんします。
まず安心していただきたいのが、てんかんの発作が起きてすぐに死んでしまうといった心配は少ないということです。
しかし、次のような時間・頻度で発作が起こった場合は、すぐに病院に連れて行ってあげてください。
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また、犬のてんかんのほとんどは、一般的に命の危険はないといわれる「特発性てんかん」ですが、まれに危険な病気が原因の「症候性てんかん」の可能性があるため、1度の発作でも動物病院で診てもらうことをおすすめします。
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心臓病
高齢犬の痙攣の場合、心臓病の発作の可能性があります。
見落とすことがないようにしましょう。
激しい運動や長時間のお散歩は、高齢犬の心臓に負担をかけます。
体中に血液を送る役目をする心臓に負担がかかると、不整脈や低血圧など問題が出てきます。
痙攣の対処法
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眠りの浅いレム睡眠による痙攣
飼い犬の場合、睡眠時間の8割は浅い眠りのレム睡眠だといわれています。
そうすると、飼い主さんのそばで眠っている愛犬は、四六時中寝言を言ったり痙攣をしていることになります。
寝ている最中に、心配だからといって起こしてはいけませんよ。
安心できるあなたのそばで、ぐっすり眠っているだけのですから。
てんかんが疑われるとき
まずは落ち着いてください、と言っても、おそらくは無理だと思いますので、まず飼い犬の様子をしっかりと覚えていてください。
あとで病院で説明するためです。
- けいれんは、全身か、部分的か(どの部分か)
- 意識の有無
- 何分くらい続いたか
- おしっこやうんちをしてしまったか
- 前兆はあったか
- 発作後はどうだったか
これらをしっかり覚えておくか、メモをとっておきます。
飼い犬がけいれんを起こしている間、どんなに可哀想でも、飼い主さんは手を出してはいけません。
意識のないときもあり、痙攣を起こしている最中に偶然に牙が飼い主さんに当たる場合もあります。
これは私の経験ですが、発作中に失禁しなくても、ある程度おさまったらトイレの場所につれていってあげましょう。
特にトイレのしつけが入っている犬は、トイレ以外の場所でしたくなくて、我慢していることがあります。
てんかんは見ている人間も恐怖ですが、当のワンちゃんはもっと恐怖を感じています。
我慢させないよう配慮してあげてください。
高齢犬に痙攣が起こった場合
特に高齢犬の発作は病気が疑われますから、早めに病院へ連れて行きましょう。
犬の痙攣の見分け方
これまで紹介した「レム睡眠による痙攣」「てんかんによる痙攣」「病気による痙攣」について、どうやって見分ければいいの?と疑問の方も多いと思いますので、動画でご紹介します。
見分けるのが難しい部分もあるかもしれませんが、目安にはなるかと思います。
レム睡眠による痙攣
寝ながら呼吸や脈拍は乱れ、眼球はキョロキョロ動き、耳、前足・後ろ足などがピクピクと痙攣を起こします。
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てんかん
てんかんによる痙攣は、「レム睡眠による痙攣」よりかなり激しい痙攣です。
両手足をピンと伸ばしたりしてひきつけをおこします。
※激しい痙攣を見慣れない方にとってはショックが強いかもしれないので、ご注意ください。
脳腫瘍による痙攣-症候性てんかん
かなり激しい痙攣です。
※激しい痙攣を見慣れない方にとってはショックが強いかもしれないので、ご注意ください。
パグ脳炎-症候性てんかん
かなり激しい痙攣です。
※激しい痙攣を見慣れない方にとってはショックが強いかもしれないので、ご注意ください。
さいごに
寝ている犬のけいれんには、思いがけない病気が潜んでいることがおわかりいただけたと思います。
心配だからといって、寝ているワンちゃんをゆすり起こしたらいけませんよ。
まずは様子をみましょう。
そのうち寝言を言い出して、夢の中でかけまわっているようなしぐさをみせたら、優しく見守ってあげましょう。